
梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』という小説。
つまらないという声もあるようで、読むかどうか迷っていませんか?
私も、実は読んでいる途中で少し退屈に感じたことがあります。でも、読み終えたときには、静かで温かな余韻に包まれ、「読んでよかった」と思えた作品でもありました。
『西の魔女が死んだ』は、人によって合う・合わないがはっきり分かれるタイプの小説かもしれないです。
この記事では、
- つまらないと感じる理由
- それでも読んでよかったと思えた理由
- 読む前に知っておきたいこと
について、私なりの視点でまとめてみました。読む前に知っておきたいポイントとしてお役立ていただければ幸いです。
『西の魔女が死んだ』が「つまらない」と言われる理由

ネットで『西の魔女が死んだ』を検索すると、「つまらなかった」という声がちらほら見つかります。
実際に多いのは、次のような理由です。
確かに、派手な出来事や事件は起きませんし、文章もあえて抑えたトーンで書かれているので、テンポを重視する人には物足りなく感じるかもしれません。
物語は、学校に行けなくなった中学生の「まい」が、自然に囲まれた祖母の家でしばらく生活し、少しずつ心を回復していく……という静かな日常を描いたもの。
魔法や冒険が出てくるわけでもなく、強烈な事件やどんでん返しがあるわけでもありません。
ですので、「刺激のある物語が好きな方」「テンポのいい話を求める方」には、たしかに物足りなく感じるかもしれません。
でも、静かな暮らしだからこそ…心に染みたりする
派手な展開やワクワクがある物語ではありません。そして私自身、読んでいる途中で飽きてしまう瞬間もありました。
しかし、読み終わった後には、祖母との関わりを通して心が温かくなり、読んで良かったと思いました。

『西の魔女が死んだ』の魅力
ではここからは、『西の魔女が死んだ』の魅力について、私自身が心に残ったポイントをいくつかご紹介します。
1. 心に響く成長物語
主人公のまいは、学校になじめず、不登校になってしまいます。
そこで彼女は、イギリス人の祖母――通称「西の魔女」の家でしばらく暮らすことに。
この「魔女」は、魔法を使うわけではありませんが、
- 自分で決めること
- 自分を信じること
- 他人に振り回されないこと
など、生き方の知恵を静かに教えてくれる存在です。
祖母との対話や日々の生活を通して、まいが少しずつ前を向いていく姿は、読む人の年齢に関係なく胸に響くものがあります。
2. 自然と調和した、祖母の丁寧な暮らし
『西の魔女が死んだ』が特別なのは、自然や、暮らしの美しさを丁寧に描いているところです。
たとえば――
- 朝決まった時間に起きて、きちんと食べて動くこと
- ミントやセージ、ラベンダー・・・ハーブティーを使った生活
- おばあちゃんと丁寧に作る手作りジャム
このように自然と調和しながら丁寧に生きる祖母の暮らしは、穏やかな気持ちにしてくれます。
都会での喧騒に疲れている人や、静かな物語が好きな人にとっては、心を癒してくれる作品です。
3. タイトルに込められた「魔女」の意味
タイトルにある「魔女」という言葉から、ファンタジーを想像する人もいるかもしれません。
でも、この物語に出てくる「魔女」は、空を飛んだり呪文を唱えたりする存在ではありません。
暮らしの中に、魔法や呪文などはまったく出てきません。
しかし、この「魔女」という要素は、祖母の人生観や価値観を象徴していて、作品に大きな影響を与えています。自分で考え、自分で選び取る強さ、そして他者に左右されない生き方。それは一種の「魔法」なのかもしれません。
祖母がまいに教える「自分で決める」という教えは、現代を生きる私たちにも響くメッセージです。この「魔女」の教えを通じて、自分自身を見つめ直し、人生に対してより前向きに向き合えるヒントが得られるかもしれません。
4. ラストメッセージの余韻に、心温まる
『西の魔女が死んだ』は、派手な展開や驚きのあるストーリーではありませんが、つまらないからと途中で読むのをやめてしまうのはもったいないと思います。ぜひ最後まで読んでほしい作品です。
ラストシーンに派手な感動があるわけではありません。けれど、静かで優しく、読んだ人の心にそっと残る何かがあります。
物語を読み終えたとき、「祖母は本当に魔女だったのかもしれない」と思わせてくれるような、そんな静かな感動が待っています。
『西の魔女が死んだ』を読むべきかどうか?
ここまで、『西の魔女が死んだ』の魅力について紹介してきましたが、読んでみて合う・合わない人がいるのは確かです。
そのため作品に合う・合わない人について、簡単にまとめてみました。読むかどうか決める際の参考にしてみて下さい。
こんな人には合わないかも
- 物語にワクワクや冒険・スピード感を求める人
- ファンタジー(魔法など)を期待して読む人
- 「刺激」や「驚き」を求めている人
こんな人におすすめ!
- 自然や丁寧な暮らしに惹かれる人
- 忙しい日常から少し離れて、静かな物語を楽しみたい人
- 少し疲れていて、癒されたいと感じている人
- 暖かな温もりに触れたい人

「つまらないかも」と思った人にこそ届いてほしい一冊
『西の魔女が死んだ』は、たしかに派手さはありません。
でも、だからこそ、そっと心を抱きしめてくれるような優しさが詰まった物語です。
そして読むタイミングによって、感じ方も変わる作品です。
読んだことがない人も、途中でつまらないと思って読むのをやめてしまった人も、もし今、少しでも気になっているのなら、ぜひ手に取ってみて下さいね。